テッコンドー
行きの電車で変な奴に出くわした。ドアに寄り掛かりながら、目を閉じてブツブツ言っていたのである。
君子、危うきに近寄らず。そいつから離れたかったが、混んでいて無理。で、そいつが何をつぶやいていたか、鷺宮付近でわかった。
「会社に行くの、嫌だなぁ。仕事、辞めてぇなぁ」であった。つまり、そいつは行きの電車の中で闘っていたのである。
そいつはまだ若く、30代前後に見えた。だが、坊主頭には白髪が相当混じっていた。もし髪を伸ばしていたら、アカギのように真っ白であったろう。
そいつの職場からすれば、うちは天国だ。雨で休む奴もいれば、出前届けを紙に書いて出す奴もいる。
現に、とっつぁんは、今日、出前を取った。昨日のうちから出前届けの紙を号泣組翁に渡しておいて、今日の定時に登場しなかったら、その紙を上司に出すように頼んでおいたそうだ。
翁によると、昨日の帰り際、とっつぁんは盛んに「腰が痛い」と言っていたとか。そんなもん、布石にならん。どうせ初めから今日は出前のつもりだったんだろ。
レスリングがオリンピックから除外されるとは寝耳に水だ。昨日、そのニュースを聞いて吐いた。
腑に落ちないのは、マイナー競技のテッコンドーがオリンピックの永久種目になったことである。どう見ても、IOC委員への実弾効果だな。「白い巨塔」の財前又一も真っ青の額と見た。
わしは、梶原一騎の「紅の挑戦者」を読んでいたので、テッコンドーが韓国の国技であることを小学校の頃から知っていた。そして、後ろ飛び回し蹴りがテッコンドーの必殺技であることも。
紅の強敵だった柳金剛は、後ろ飛び回し蹴りの使い手であった。それに現実味を帯びさせるよう、「後ろ飛び回し蹴りは、かの大山倍達も認めるテッコンドーの最大の必殺技である」と、梶原一騎は書いている。
近代五種が残るのも納得いかん。近代五種なんて、昔の遺物みたいなもんじゃないか。
「クイズ神」に出た奴らは、近代五種の種目をクソ余裕で答えるだろう。だから、それが何だって言うんだ。
ゴールデンウィークまで長い。ゴールデンウィークでは、また字一色を見せてやるか。それこそ、わしの後ろ飛び回し蹴りだ。
その前に、実家の借り手が決まっていることを切に願っている…。
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