やはりか…
恐れていた通り、またしても甲子園は雨で中止になってしまった。これで、決勝戦はわしの出勤日である来週の土曜日に行われることになった。
クソ〜、今年から準々決勝を2日に分けて行うようになった煽りをモロに受けてしまったわ。イチイチ、イチイチ、間が悪過ぎる。ホント、高野連、使えねぇ。
今日は東京もクソ雨が降っており、夏にしては異様に涼しかったので体を温めようと、信玄ラーメンに昼飯を食いに行った。
信玄亭のエキセントリックおやじは、異様な野球好きである。なんで、高校野球中継のラジオがかかっていると思い、ここ数日、足が遠のいていた。
わしは仕事の日はビデオに高校野球をとっているので、結果を知らないまま家に帰りたいのだ。今日は中止だったから安心して行ったのであるが…。
1時半過ぎに行ったこともあり、先客が1人いただけだった。そして、いつもいる手伝いもおばさんもいなかった。
暖簾をくぐるなり、「いらっ」という声がかかった。最初の頃は何を言われたのかよくわからなかったが、そのうち、「いらっ」ってのは、「いらっしゃい」の省略形というのが判明した。しかし、客に「いらっ」なんて言う奴はいねぇよ。
わしが野菜ラーメンを注文したらすぐに先客が帰り、おやじとツーショットになった。そこで、わしはおやじの気の狂ったような動作に注目することにした。
すると、オヤジは「さぁぁ、ぶぁぁ」という奇声をあげながら野菜を炒め出した。そして、炒めながら客が入って来ないかと目で牽制球を送ってきた。しまった、そこで目が合っちまった。
わしも長いこと信玄亭に通っているが、おやじと話したことはほとんどない。というのも、おやじと常連客との会話があまりに異様だったので、おやじとしゃべるのを避けていたからである。
話し好きのおやじは目が合った瞬間を見逃さず、わしに話しかけてきた。「おにいさん、夏休みはいつからなの? うちは、明日、あさってと休みだからね」と切り出した。
わ し:「夏休みは来週ですよ。マスターは帰省するんですか?」
おやじ:「喜三郎ちゃんは埼玉県の小川に住んでいるから、帰省はしないの」
※40をとっくに超えたおやじが自分をちゃんづけで呼ぶんじゃねぇよ。
わ し:「小川って、どこですか?」
おやじ:「東上線で川越よりずっと先だよ。おにいさん、どこに住んでんの?」
わ し:「中野ですよ」
おやじ:「近くていいね。お子さん、何人いるの?」
※この野郎、その手の質問はタブーだ。
わ し:「俺、チョンガーですよ」
おやじ:「そうだと思ってたよ」
※てめぇ、わしにケンカ売ってんのか?
わ し:「マスターは、休み中は家族サービスですか?」
おやじ:「喜三郎ちゃんも1人もんだからさ」
やはりか…。このおやじにかみさんがいるわけがねぇ。いたら、わしが許さん。
しかし、向こうもそう思っていたくせぃ。にしても、チョンガーの穴には変な奴しかおらんな。
そうこうしているうちにラーメンができあがった。わしが食い始めてもおやじの野郎、「やれ、どこのファンだ」、「やれ、どの辺に勤めているんだ」と、矢継ぎ早の質問を浴びせ続けた。
おい〜、落ち着いて、ラーメンを食わせてくれよ。いい加減辟易していたら、常連の「山ちゃん」が来て救われた。
この超常連の山ちゃん、氏素性がまったく不明。小柄で痩せこけた体型、土色の顔色、ざんばら髪、白髪交じりのあごひげ、そして、よれよれの服装。
言っちゃ悪いが、どう見ても浮浪者である。事実働いているふうでもないし、山ちゃんが昼日中にそのへんをプラプラしているのを何度となく見かけたことがる。
その山ちゃん、ほぼ毎日のように信玄亭でビール飲みながらおやじと掛け合いをやっている。しかし、ようわからんのが、手伝いのおばさんが来ない日に山ちゃんが割烹着を着て、おやじの手伝いをすることがままあることである。
いったい、山ちゃんとおやじの関係は何なんだ? そして、山ちゃん、何をして生計を立てているんだ? 本当にわけがわからん。
それはともかく、おやじを知っている同僚数人におやじがチョンガーと言ったら、みんな一様に納得していた。しかし、わしも、いい加減自分の頭のハエを殺さんと。もう100匹以上舞っておることだろう。
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