再入院日記1
部屋に運び込まれて点滴を受けたら、胃の痛みはなくなった。が、吐き気は一向に収まる気配はなく、何度となく点滴車を押して、トイレとベッドを往復した。
それで一睡もできなかったのであるが、朝6時の「おはようございます。患者さんは体温計を中に入れてお待ち下さい」の放送に、「めん鳥じゃねぇぞ」と独り言を言ったのだから、多少は良くなっていたのかもしれない。
昨晩の当直の看護婦は、怖い感じのおばさんと、なかなか感じのいい若い看護婦だった。そうだろう、そうだろう、わしの部屋に検温に来たのはおばさんの方であった。わしの引きからして、2分の1の確率に勝てるわけがないわなぁ。
それから2時間ほどしたが、吐き気が収まる気配が一向にしない。そこに、昨日胃カメラの検査をしてくれ、前の入院の時に散々お世話になった医者(若いふとっちょの先生)が登場した。
地獄に仏とはこのこと。吐き気のことを訴えたら、「座薬がいいでしょう」とのことで、座薬をケツに入れることになった。
が、ここでも登場したのはおばさん看護婦。まあ、あられのない恰好をさせられたのだから、妙齢の看護婦でなくて良かったのかもしれない。
座薬を入れられたことで大腸が刺激されたのだろう、ほどなくクソをしてしまった。
クソといっしょに座薬の成分も出してしまったのか、座薬を入れて1時間経っても吐き気は継続したまま。
しゃあないんでナースコールをしたのだが、「頼む、若い方の看護婦が出てくれ」の願いも虚しく、出たのはおばさん看護婦。事情を話して、もう一度座薬をケツにブチ込んでもらったけど、「しばらくトイレは我慢して下さい」と、不機嫌攻撃を食らってしまった。
今度も猛烈なクソ位に襲われたが、「これまで修羅場をくぐって来たのは、今日のような場面のためじゃないのか」と自分を鼓舞して、なんとかしのいだのであった。ともあれ、クソとの闘いに勝利した結果、なんとか吐き気が去った。
それでようやく生きた心地になり、午後から昼寝をしたのだが、2時頃だったか、新しい患者が部屋に運び込まれて来た。その若いのは、吐き気と下痢に悩まされているようだった。
状態が落ち着いてから看護婦がそいつに聞き取り調査を行ったのだが、聞くとはなしにそいつの情報が耳に入ってきた。
主に入院歴が聞こえたのだが、その彼は肺炎や骨折で何回も入院したことがあるらしい。その中で最も驚いたのは、「家が放火されて、火傷でしばらく入院したことがある」という話であった。
さらに、驚いたのがそいつの職業である。「阿波踊りを踊っています」って、意味がわからん。
そいつの話も看護婦の間で話題になったであろうが、わしも話しのネタにされているに違いあるまい。ばあさんと孫が同時期に同じ病院に入院するだけでも前代未聞だろう上に、1か月経つか経たないうちに病院に舞い戻ったのだから…。
しかし、病院でやることねぇなぁ。
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