親展つき不幸の手紙
本日、ついにNHKに不幸の手紙を書いた。知行合一を実践したまでよ。
ただし、書くと決意してから数日間、冷却期間を置いた。
ツルゲーネフが「初恋」を上梓したのも、自分の体験から20年以上経ってからだったそうだ。そうでないと、熱い気持ちのままに筆が進んで、名作にならなかっただろうと言われている。
冷却期間…。嫌な言葉だ。
その昔、浅草の姉ちゃんに、そう言われて振られた。小柄だったが、イタリア系の顔をしたかなりの美人だっただけに、鬼のようにハガかった。
それはともかくとして、以下が不幸の手紙の全文である。
拝啓
平素より御社のプロ野球中継を視聴している者です。
御社のアナウンサーの実況は落ち着いた口調で好感が持て、解説者の鈴木啓示氏や大島康徳氏らの解説も的確でわかりやすいです。
ただ1点、気になることがあります。
それは、御社の多くの実況アナウンサーが、巨人だけをジャイアンツと言い、他の球団は「ヤクルト」「楽天」のように企業名で言うことです。
阪神−中日など巨人以外のチーム同士の試合中に、他の球場の経過をレポートする際も、 巨人だけをジャイアンツと言うアナウンサーも少なくありません。
これには強烈な違和感を覚えます。
公共放送である御社のアナウンサーの実況としては、あるまじき行為と断言できます。
なんといっても、1人の野球ファンとして残念です。
実際、そういう実況をするアナウンサーが担当の試合は見る気が失せます。
御社のプロ野球中継を視聴している人は巨人ファンだけではありません。
何色にも染まっていない少年ファンも見ています。
御社の実況アナウンサーが全ての球団を公平に扱うことを切に願います。
なお、このような状況が改まらない場合は、署名活動など、さらなる手段を考えます。
ご多忙なところ失礼しました。
敬具
この手紙を出す際、「親展」のスタンプを切手の下に押した。そう、わざわざ「親展」のスタンプを350円も出して買ったのである。
それなら、チーフディレクターが読もう。チーフディレクターが読売ファンだったら話にならん。
この日記を通じて、わしが出したことを知られても、どうってことはない。正論だからな。それに、誰のことも誹謗していない。
キムラ嬢が客からもらった名刺をゴミ箱に入れるのと同じ行為をされてもいい。とにかく、もう我慢ならないのだ。
それでも、冷静沈着に筆を進めた。金竜飛のボクシングスタイルを倣ったのである。
昨年は、シーズンオフに送りつけてやろうと思っていた。が、シーズン中の方が霊験あらたかだろう。
というわけで、今から投函に行って来る。
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