無言の業

 
 プー太郎生活88日目。夏も近づく八十八夜なんて風流なもんじゃねぇ。

 今日も首輪と胴輪を付ける際、小太郎にだいぶ噛まれた。それでも、昨日ほどではなかった。

 なんとかディック・ザ・ブルーザーにならない妙案がないものか。
「散歩は楽しい」と刷り込ませることが効果的だと思うが…。

 今日は、前の職場に顔を出した。で、
「7月1日の新人歓迎会に出席しないか?」と、幹事に声を掛けられた。

 それは嬉しい限りである。むろん、出る。

 
「わしが大納言に電話して大納言を呼ぶ」と言ったら、若手が一様に喜んだ。その辺は、大納言の人徳であろう。

 ハガいのは、怜悧な性格の上級上司が出席することである。その人がわしの上司だったら、高校野球やワールドカップで出前を取れなかったであろう。

 10時過ぎに大納言に電話した。そしたら、声がかすれていた。

 
「風邪ですか?」と聞いたら、「いや、ここ数日、無言の業をやっているので」と返ってきた。

 ったく、インド人じゃねぇぞ。無言の業を1年以上やっているインド人がいるかもしれん。

 しかし、上には上がいる。立ちの業を4年間続けているインド人をテレビで見たことがある。そのインド人は、
「眠る時は木に寄りかかって眠る」と言っていた。

 大納言に、
「若手が皆、大納言の出席を望んでいますよ」と言ったのに、「いや、新人歓迎会に僕が出るって変でしょ」と断られた。

 大納言が言うには、
「もう辞めた人間なので、新人を歓迎する立場ではないから」であった。それはそうだ。

 それに、もし大納言が顔を出したら、若手のベクトルが大納言に向かって、新人が気の毒な立場になるかもしれないしな。

 とはいえ、二次会には出るそうだ。それで良しとするか。

 大納言よ、二次会では思う存分、飲んでくれ。もう出前を取る必要はないからな。

 大納言と長電話していたので、小太郎とまだ遊んでいない。これからオヤツをやる。

 って、飼い方が間違っているような気がする…。

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