クソの役にも立たず

 
 プー太郎生活92日目。

 
「カリスマ訓練士のたった5分でどんどん犬は賢くなる」は、クソの役にも立たなかった。「あっという間に噛み癖が消える‘一口給餌法’」という章を見て、本に書いてある通りにしたのだが…。

 その章の冒頭で著者は、
「噛み癖がある犬に共通しているのは、
『俺さまは偉いんだ』と考えているところだ、といっていいでしょう」と述べている。

 ということは、わしは小太郎にナメくさられているのか? 

 それは有り得る。なにせ、大概のワガママを許しているからな。

 
「その鼻っ柱を折らない限り、噛む行為はなくなりません」

 なるほど。わしの方が上ということを示さないといけないということか。

 そこで、‘一口給餌法’とやらを試してみた。‘一口給餌法’とは…。

   犬にリードをつけてテーブルの脚などに繋ぐ
 →食器に一口分の餌を入れ、犬の前に差し出す
 →勝手に食べようとしたら、食器を引く
 →リードで繋がれている犬は食べることができない
 →これを何回か繰り返す
 →食べに行っても食べることができないとわかった犬は、食器を出しても食べに来なくなる
 →待てるようになったら、そこで初めて
「待て」の言葉をかぶせる
 →次は
「待て」と言ってから、食器に一口分の餌を入れる
 →待ったまま2、3秒したら、今度は
「よし」の言葉を掛け、食器を近づけて餌を食べさせる
 →この方法で一口ずつ餌を与えられた犬は、上位にいる飼い主から下位にいる自分が餌をもらっていることを実感する
 →自分がボスでないとわかった犬は飼い主を噛まなくなる。


 まず、リードを付けるのが難儀であった。リードを見ただけで小太郎は興奮し、わしは今日もディック・ザ・ブルーザーになった。

 なんとかリードの装着に成功したものの、
「食べに行っても食べることできないとわかった犬は、食器を出しても食べに来なくなる」ということが、小太郎には該当しなかった。

 何度やっても、餌を食べに来ようとする。が、20回目くらいで小太郎は諦めた。

 そこで、
「待て」「よし」をやった。そして、それを繰り返した。これで成功したと思わない奴はいないだろう。

 ところがである。リードを解く時、手を噛まれた。それも何回もだ。

 著者に書いた通りにやったのに、なんでまたディック・ザ・ブルーザーになるんだよ。

 その本のレビューがそれほど高くなかった理由がわかったぜ。やはり5点満点で4.2以上ないとダメだな。

 ペットショップのしつけ教室は、なかなか予約が取れまい。こうなったら訓練士に預けるか。

 広島が読売にサヨナラ負けを食らって吐き倒れていた刹那、弟から電話があった。
「なんだよ?」と、不機嫌攻撃を爆発させたのは当然である。

 
「お前、ニュースを見ていないのか?」と言うから、「見てねぇよ」と、さらに不機嫌攻撃を激化させた。

 
「今日、新幹線の中で焼身自殺があって、大ニュースになっている。俺は、その新幹線に乗っていたんだよ」 

 あんだと? 今日、京都に出張に行くとは聞いていたが…。ここで不機嫌攻撃はストップとなった。

 
「巻き添えになった人もいてよ。俺は10号車に乗っていて、自殺があった車両は1号車だったけど、大騒ぎになったよ。小田原と新横浜の間で3時間も動かないんで参った。1時間半ほどで冷房が切れてさ。新幹線は窓が開かないから、暑くてたまんなかったよ。車掌が機転を利かせて、線路に降りないことを条件にドアを開けてくれて、多少風が入ってきたけどな」 

 
「で、出張はどうなったんだよ?」と、トンチンカンな質問をした。「バカ。なしになったに決まっているだろ」と一喝された。

 車掌が機転の利く人間で良かったな。全く融通の利かない号泣組翁だったら、車中の蒸し風呂状態を放置していただろう。

 しかし、巻き添えになって亡くなった人はハガ過ぎる。他にも怪我人がいるそうだし。

 怪我をしなくても、1号車に乗っていて、焼身自殺の場面を見たらトラウマになろう。わしならショックで入院になったかもしれん。

 これから報道ステーションを見るか。自民党に魂を売った古館のツラなど拝みたくないが、そうも言ってられん。

 明日は飲み会で遅くなる。二次会で大納言と再会できそうなのは楽しみである。

 クソ〜、まだ手の傷が生々しい。カリスマ訓練士、許さん!

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