昔の記者座談会
プー太郎生活3113日目。
このところ朝が早い。今朝も8時過ぎに目が覚めた。
今日はティップネスの休館日だから引き籠り時間が長くなってしまう。
それだと家で悶々としているだけなので図書館に行くことにした。
その目的は、1970年代と1980年代の朝日新聞と毎日新聞の縮刷版の高校野球の記事をコピーすることであった。
昔の高校野球の記事をコピーしたものをクソ余裕で持っていたのだが、行方不明となり、どうしても見つからないのである、
無駄足になりたくないので、以前にコピーした新宿区立下落合図書館に電話した。
それが正解であった。新宿区立下落合図書館に昔あった新聞の縮刷版は今は置いていなく、新宿区立中央図書館にあるとのことだったからである。
ハガいのは、新宿区立中央図書館まで高田馬場駅から徒歩で18分も掛かりくさることである。
それでもコピー代が1枚10円と電話で聞いたので、新宿区立中央図書館に出向くことにした。
都立中央図書館だとコピー代が1枚35円とシャレにならないからだ。
新宿区立中央図書館では、朝日新聞と毎日新聞の縮刷版は閉架書庫に収められているという。
それで受付で、朝日新聞と毎日新聞の縮刷版を持って来てくれるように頼んだ。
1日に10冊限りということで、1976年の8月、1977年の8月、1978年の8月、1982年の3月、1983年の朝日新聞と毎日新聞の縮刷版をお願いした。
さすがに高校野球関連の全ページをコピーするわけにはいかないので、記者座談会と有力校の試合を報じた記事のみにした。
それにしても、昔の記事は読ませる。
以下に、1976年、1977年の朝日新聞の記者座談会などを書きたい。
1976年の見出しは、「崇徳、『春夏』ねらう」「続く柳川商、銚子商」「追う『打』の東海大相模」である。
1976年の記者座談会は、崇徳への言及が延々と続いているのが大きな特徴である。
-:話題は何と言っても、崇徳の春夏連覇なるかだが、その可能性は?
E:十分あると思う。投攻守、どれを見ても春の選抜より一段と逞しくなっている。それに巧さも備えてきた。
D:同感だ。春の黒田は膝が開き気味だったが、その欠点も消えているね。
スナップが良く効き、体も十分に乗っているので、打者の手元に来てからの伸びが見違えるほど良くなった。カーブもいい。
だから、味方がリードして打者が下位だと、カーブで打たせて取る幅のあるピッチングをするようになった。
E:広島大会の準決勝は強敵の広島商が相手だったが、走者が出ると、よほど制球力に自信があるのか、ボールを2つ投げて、広島商の出方をうかがう余裕すら見せた。全てに成長しているね。
-:守備力は?
D:全体によくまとまっている。二遊間もがっちりしている。特に遊撃の山﨑は守備範囲、肩とも抜群。応武の盗塁阻止率も100%。
守りの野球を目指してきた崇徳だが、吉田監督もこと守備に関しては自信を持っているようだ。
E:打線も優勝候補のNo.1にふさわしい顔ぶれだよ。
1、2番の山﨑、樽岡はパンチ力がある。
小川、永田、兼光の主力は、楽に本塁打するパワーを持っている。中でも永田は右に打ち込むほどいいリストをしている。
この3人が打席に立つと相手はヘイ際まで後退していた。9番の槇村もミートのいい選手だ。
D:広島といえば強豪ひしめく激戦地区の1つ。ここで文句なしの圧勝をし続けてきたのは、最近では崇徳くらいなもの。
あの広島商ですらノーヒット・ノーランに抑え込まれたほどだから…。
E:広島大会では、力のチームには力で、技のチームには技でいった感じだった。スキがないね。
わしが知っている限り、優勝候補筆頭のチームでも、ここまで評価が高かったことはない。
あの1984年の桑田、清原が2年のチーム以上だ。
その崇徳がワンマンチームの海星に負けたとは、DとEの記者からすれば信じられなかったであろう。
スコアは0-1。その1点も当たり損ねの内野安打がタイムリーになったもの。
その虎の子の1点をその試合で絶好調だった剛腕・酒井が守ったのだが、超強豪が敗れる唯一のパターンであった。
76年は、初戦のカードが決まった後の記事も当時ならではだった。
「前半の焦点は、崇徳、東海大相模、柳川商に挑む中堅チームの戦いぶりだ。
(中略)
いずれにしても、崇徳、東海大相模、柳川商とこの中堅3チームとでは力に差があることは事実で、強豪打倒がなるとすれば、東海大四、釧路江南、三重とも‘捨て身’の戦いをする以外になさそうだ。」
77年の記者座談会もユニークそのもので、今では考えらない内容になっている。
なにせ優勝候補への言及がすこぶる長い。以下がそれである。
-:今年の代表から見て、まず感じることは?
D:昨年の崇徳のような超A級のチームはないが、実力校が実に多い。
A:確かに例年と比較しても、今年は粒揃いでレベルも高い。
C:理由は投手力が良いということだろう。
-そこで北から順番にAクラスと見られるチームを挙げてもらいたいのだが…。
B:北から挙げると能代かな。
F:高松が好投手と評判だ。
B:身長は176cm。本格派で速球、カーブとも威力十分。
-:関東は、最近、甲子園で好成績を上げているので、ほとんどが有力校と言えるのでは…。
A:いや、そうでもない。自信を持って推薦できるのは千葉商と早稲田実だ。
B:桜美林も加えたい。前年度の優勝校が連続出場したのは10年ぶり。もし優勝すれば、22年、23年の小倉商以来となるが、その可能性も…。
A:千葉商は‘実力の千葉県’でもまれ、勝ち抜いてきた実力を評価したい。早稲田実は実力に関しては関東で№1チーム。
B:桜美林は迫力に欠けるが、地方大会では2失策。守りは万全で実にしぶとい。
-:中部、北信越は?
C:中部は残念ながら…。でも北信越は星稜を挙げたい。
F:小松が健在だからね。
C:投球に幅ができ、精神的にも成長してきた。
E:近畿は智弁学園、東洋大姫路だろう。山口(智弁学園)、松本(東洋大姫路)の本格派がおり、攻守とも充実している。
D:中・四国では広島商と今治西だ。広島商は投手力に不安があるが、攻守走がいい。今治西には全国屈指の好投手・三谷がいるから。
F:九州は今挙がったチームに比べるとやや実力的に落ちるな。
-:熊本工、豊見城が強いのでは?
F:いや。熊本工は投打に今一つ決め手を欠く。強いて挙げるなら、一段と逞しくなった豊見城だな。
-:A級が10校。なるほど、有力校がズラリだね。しかし、この中をさらに絞って、できれば「5強」くらいに。
D:難しいね。ズバリ言って、智弁学園と早稲田実が2強で、続くのは星稜、東洋大姫路、広島商と見る。他の5校とはちょっと差がある。
E:智弁学園は山口が成長した。強打の天理に対して、シュートとスライダーの巧技で完全に封じた力と巧さは抜群だった。
守りも中葉遊撃手を中心に固く、6試合で1失点。だから智弁学園には異存はない。ただ、早稲田実はどうも、
D:早稲田実は今春の関東大会の優勝チームだよ。昨年、桜美林がこのケースで優勝したから言うのではないが、井上、荒木の4割打線は昨年の崇徳と互角だ。
B:早稲田実の秘めた実力は認める。しかし、投手は5試合で10点も取られているし、投打にモロさを感じる。星稜も小松1人のチームだ。今治西の方が充実している。
E:そう。今治西の三谷は185mの長身。内角へのシュートが武器で、カーブも鋭い。レベルの高い愛媛大会で全5試合で1失点。打力だけの早稲田実よりも安定感がある。東洋大姫路も粗い。
C:智弁学園が強いことは認めるが、早稲田実や今治西なら桜美林、広島商、星稜、東洋大姫路も互角と見る。
F:むしろ広島商の方が上だ。エースの住吉に制球の不安があるというが、内外角をつく速球は山口に劣らない球威がある。
それに全員が‘広商野球’を身につけ、攻守走どれを取ってもスキがない。
その洗練された野球は、大きな大会になればなるほど威力を発揮してくる。智弁学園にはこの巧さがない。
A:それは言えるね。だから桜美林を3強に入れる。昨年の優勝はたぶんに無欲が幸いしたとも言えるが、投手の小野寺、和気を中心にした打線はともに昨年以上。
そのうえ、浜田監督の‘負けない野球’が浸透してきた。他のチームほどの迫力はないが、着実に得点し、確実に守り抜く野球は大きな強みだ。それに千葉商もいいよ。
E:最近の千葉代表は強いからね。
A:派手さはないが、投打にまとまっている。エースの野崎は真っ向から小気味良い投球をする。特に胸元をつく速球はそう簡単には打たれない。
守備は6試合で6失策と普通だが、鈴木監督は、「うちの守備は芸術品だ」と言う。確かにオーバーと言えないほど鍛えられている。
D:でもね、桜美林、今治西と一緒で小粒すぎる感じだ。
A:そうでもない。とにかく千葉県はここ10年で習志野(2回)、銚子商と、計3回も全国制覇し、通算24勝6敗と抜群の成績を上げている。このデータからも遜色ない。
-:東洋大姫路、豊見城、能代はどうなのか。
D:桜美林や広島商のスキのない野球は認めるが、やはり実力が伴わないと。
東洋大姫路は左腕No.1の松本を擁し、攻走とも洗練されている。
それに6月下旬だが、智弁学園との練習試合で松本が山口と投げ合って2-0で智弁学園を破った。これを見ても東洋大姫路の底力がうかがえる。
F:しかし、松本は‘四球病’があるし、チーム全体も粗っぽい感じだ。
B:松本に制球の不安はある。でも昨年までの松本ではない。精神的に成長している。
実力は随一なので、波に乗れば、あっさり優勝しそうだ。智弁学園、今治西とで文句なしの3強だ。
D:東洋大姫路なら星稜を買う。小松は昨年のベスト4投手。その実績の上に今年は力も本物になってきた。
今までは力んで自滅したが、八分で投げるコツを覚えて、内容が良くなった。球威、切れとも申し分ない。小松を中心にした「和」は実に固い。
E:小松が投げて打ってでは苦しい。それなら、豊見城、能代も加えられるよ。
A、C、F:豊見城、能代は、この8校の下だ。
-それでは結論は。
E:智弁学園、今治西を2本柱に、紙一重で桜美林、広島商。
C:智弁学園を筆頭に、東洋大姫路、広島商、星稜、桜美林。
F:広島商、今治西が2強で、追うのは智弁学園、東洋大姫路。関東勢はもう1つ決め手がない。
B:西日本勢がやや上だ。関東勢がどう対抗するかだ。
-豊見城、能代が落ちたが、それ以外は随分意見が分かれたね。
それでは6人が挙げた8強をA´´(3点)、A´(2点)、A(1点)で採点してみると、智弁学園が17点で圧倒的に1位。
ともに広島商、今治西が11点で2位。桜美林、東洋大姫路は10点。千葉商9点、早稲田実8点、星稜6点という事になったが…。
F:智弁学園が高すぎるよ。
D:早稲田実はちょっと低い。
B:東洋大姫路と星稜も低すぎると思う。
A:千葉商も辛い。
と、ここまでが「8強」についての討論である。これほど優勝候補について侃々諤々な記者座談会も珍しい。
「C:中部は残念ながら…。」、「A、C、F:豊見城、能代は、この8校の下だ。」、「-豊見城、能代が落ちたが」は、今ではあり得ない物言いだわな。
77年も抽選後の記事が攻めている。
「初戦の相手が決まった。ここ10年の第1回抽選では、強豪チームがうまく分散し、序盤は強豪に挑戦する新鋭校、無名校の戦いぶりが注目される程度で、見どころは少なかった。
ところが今大会は「8強」に挙げられたうち、6校がいきなり激突。球趣を盛り上げる。
すなわち、星稜-智弁学園、桜美林-早稲田実、千葉商-東洋大姫路がそれだ。
(中略)
いきなりぶつかり合うこの6校に比べて8強の残り広島商、今治西の2校は恵まれた。
広島商は佐賀商、今治西は釧路江南が相手。実力に差があるのは事実で、よほどのことがない限りは勝ち進む可能性が高い」
「無名校」、「実力に差があるのは事実」、「よほどのことがない限りは」には唖然とする。
今、こんなことを書いたら、クソ余裕でデスクの赤が入るわな、
82年だけ3月の縮刷版にしたのは、大会の展望記事が読みたかったからである。
毎日新聞の見出しは、「4強密集 Bゾーン」である。
そして、記事の出だしは、「まず4強には箕島、上尾、PL学園、早稲田実が文句なしに挙げられよう」である。
その4強のうち、荒木3年の早稲田実が最も格下扱いというのが、この大会のレベルの高さを表していると言えよう。
「終盤を占う」では、「ずばり上尾-箕島の勝者が地力と勢いで優勝争いの先頭に立つのではないか」と書いてある。
結果はご存知の通り。箕島が上尾、明徳、PLとの横綱チーム3連戦で力尽きてしまった。
朝日新聞の見出しは、「強豪激突のBゾーン」。
そして、「30校の中では、PL学園、上尾、箕島、早稲田実が実力上位と見られる」とある。
この4校のうちのPL学園、上尾、箕島に加え、明徳が準々決勝までに潰し合ったのだから、そのゾーンこそ正に死のゾーンと言えた。
朝日は最後に、こう締めている。
「さて、優勝の行方だが、投手力を含めた守備力が大きな比重を占めることを考えると、やはりPL学園が最強か。榎田、飯田という2人の好投手を揃えているのが強みだ。
そして、箕島、早稲田実。もちろん、上尾も初戦を勝てば資格十分」
こうしてみると、朝日新聞は慧眼であったわけだ。
しかし、わしの回顧主義も、これに極まれりだな。
話を大相撲5日目に変えたい。
照ノ富士が2勝3敗で序盤を終えるとは、誰が予想したであろうか?
今日の相撲を見る限り、今場所は出前を取るべきだと思った。
立ち合いに圧力がないし、押されると全く残せないということは、下半身の状態が相当悪いくせぇからである。
貴景勝は今日負けて3勝2敗か。
昔と違って大関互助会などないから、1つ白星が先行しているとはいえ、大関から陥落すると見た。
明日はティップネスに行く。選抜大会があるから、明日が今月最後のティップネス詣でとなる。
明日も面妖な面々と会いたいと思っている。了