単位くれ〜
その@:わび・さび
日本史の試験は前期試験がなかったから、後期試験での一発勝負であった。何でも持ち込み可という。そこで、わしは日本史の大辞典を重い思いをして持って行った。
この授業は出席を取っていなかったので、余裕で出席などしとらんかった。とはいえ、辞典があるから何でも来いという心境で試験に臨んだ。
しかし、黒板に書かれた試験問題は、「授業で印象に残っていることを書きなさい」であった。その瞬間、わしの動きは止まった。
前年の問題は、「室町文化について書きなさい」だったという情報をなんとか思い出した。
そこで、「去年試験出したものを授業中やってないわけがない」と思い、「室町文化の授業がとても印象に残っています。日本のわび、さびという文化は世界に誇れるものだと思っています…」と書き出し、室町文化について大辞典を見ながら延々と書いたのであった。
もちろん、室町文化などに興味などない。しかし、教授に媚びを売ろうと、です・ます調で書いたのが如何にもせこい。
優をゲットしたと思ったのであるが、良であった。納得いかん。
そのA:教授、激怒
「現代思想」という授業も、教授は出席を取っていなかった。したがって、日頃の授業は5人くらいしか出席していなかったという。しかし、試験直前の授業は、試験の情報を得ようと200人くらいの出席者であふれ返った。
その授業の日、教授は教室に入るなり烈火の如く怒り出した。「こんなに登録しているのか。こんないい加減なことは許されない。来年から絶対に出席を取る」とのたまわった。やぶねぇ、その年に登録しておって良かったわい。
しかし、その教授もてめぇの授業に登録している学生の数くらい把握しておけよな。
そのB:アホか
サークルの超デタラメな後輩のアホ発言にあきれ返ったことがある。そいつは2年生の時に一般教養の授業を前期の終わりくらいまで出たが、結局、それ以降出席しなくなった。
そして、試験も受けなかった。その授業は出席を取っていたので、出席しなくなった時点でアウトである。
そいつは、翌年も同じ授業を取った。そしたらそいつは、「去年は単位取れなかったけど、途中まで出席したので、その出席回数が今年の出席回数に加味される」と、世迷言を言った。
そんなわけねぇだろ。言うまでもなく、翌年もそいつはその単位を落としたのであった。
そのC:TKO負け
1年間に登録できる科目数には上限がある。しかし、そのデタラメ後輩はあまりに単位を残していたので、6年の終わりに大学側から、「あと2年間、それぞれの年に上限いっぱいに科目を登録しても卒業単位に達しません」とTKOを宣告されたのであった。
しかし、奴は大学にあと2年間籍を置いたのだった。当然の如く、その間一度たりとて出席などしなかった。そして、大学から放逐されたのであった。
そのD:8年で…
高校からの友人の先輩にもデタラメなのがいた。その人は8年でなった時点でも、語学、一般教養科目、体育と、3拍子揃って単位を残していた。
しかも、体育は2つ。体育は1年で1つしか登録できないから、もうその時点で終わり。しかし、8年で体育を2つ残している奴なんかいねぇよ。
しかし、その人はそんなことは全く意に介さず、8年生時も麻雀をしまくっていたのであった。
そのE:女相撲
卒業するには、体育を2科目取らなくてはならない。体育は種目別に分かれており、軟式野球、サッカー、ウェートリフティング、スキー、水泳など様々な種目が用意されている。
中には、トランポリンなどというわけのわからない種目もあった。しかし、1年中トランポリンやるってのもハガい。
人気のある種目には人気が集中し、抽選によって取れるかどうかが決まる。不人気な種目は、相撲、剣道、ボクシングなどの格闘技、さらには、朝5時起きが10日続くアイススケートなどであった。
全く運動ができない奴には、この体育2つというのは卒業への大きな壁である。そして、男女別に分かれている科目はすごく少ないから、女子にとっても体育2つというのは卒業への試練であった。
わしはソフトボールを取っていたが、その授業に1人だけ女子がいた。その人にアドバンテージを与えるため、その人が打席に入ると一塁までの距離を半分にするという措置が取られた。そのため、その人が打席に入ると、内野が異常な前進守備を取るという風景が展開されていたのであった。
いずれにせよ、女子にとって体育を2つ取るというのは本当にきついものであった。
ある年、とある女性が相撲に登録したという。もちろん、相撲の授業に女子はその人だけ。なんで、その女性は相撲を取らされることなく、1年中見学で単位をもらったそうだ。
そのことを聞いた女性がそのあくる年、それを目論んで相撲に登録した。しかし、もう1人その話しを聞きつけていた女性がいて、その年の相撲の授業は女子が2人となり、1年中その2人で相撲を取らされ続けたのであった。
そのF:総合科目
一般教養科目に総合科目というわけのわからない科目があった。その授業では週ごとに違う教授が授業をするという形式が取られた。試験は行わず、出席だけで成績をつけるということであった。
年20回授業が行われたが、麻雀やらなんやかんやで成績は10勝10敗。「こりゃ落としたな」と思って成績表を見たら、なんと優。
それにしても、いい加減な大学だ。20連勝の奴がわしの成績を知ってかなり怒っていたが、わしに怒ったってしゃあないやろ。
そのG:カント
哲学の授業では出席を取っていなかった。出席していた奴に聞いたら、ソクラテス、プラトン、アリストテレスの3大ギリシア哲学者について講義がなされていたという。
で、その3人についての一夜づけで試験に臨んだであるが、配られた試験用紙を見て吐いた。用紙の裏側からカントの文字が…。果たして、試験開始の合図で試験用紙を表にしたら、やはり、「カントについて書け」であった。この野郎、ガセネタ流しやがったな。
しかし、時すでに遅し。カントについてなど1行くらいしか書けん。メキシコの世界チャンピオンのミゲール・カントについてなら書けるが、哲学の教授はそんなシャレが通じるタマではない。
しゃあねぇから、「カントは、ソクラテス、プラトン、アリストテレスと並ぶ偉大な哲学者である。そのソクラテスというのは…」と、延々と勉強していった3人について書いたのであったが…。
成績については、ここでは申し上げない。
そのH:全科目レポート
ある年、学費が高すぎるという名目で学生がストを行い、後期試験が行われず、全科目レポートになった。
これは幸いと思ったが、教育道徳の課題を見て吐いた。授業のノートを出せだと?
やべぇ、1回も出席しとらん。当然、ノートなどない。その科目を取っている奴何人かに連絡を取ったが、出席を取っていないその授業に出ている奴など誰もいなかった。
しゃあねぇから図書館から本借りて適当なことを書いて出した。そしたらなんと優であった。しかし、教育道徳という科目がこんないい加減なことでいいのか?
そのI:いたいけな1年生
体育は実技のほかに講義も取らなくてはならない。わしが1年次に登録したのは、「スポーツ文化論」という科目であった。その担当教授は大西鉄之助という超名物教授であった。
以下は、その講義における彼の語録である。
・「岸信介はギロチンだよ。俺ら学生を戦場に送りやがって…」
・「俺は、動物で一番強いのは水牛だと思う。あの突進力は素晴らしい」
・「君達、身辺整理しとけよ。もし突然死んで身の回りから変なものが出てきたら恥だからな」
・「100m走が一番単純な競技だよ。駆け引きも作戦も何もないからな。だから黒人が強いんだな」
しかし、それが「スポーツ文化論」の講義かぁ。
ところで、その講義の出欠は、前から出席簿が回ってきて自分の欄に名前を記入して取るものであった。最初の講義の日、隣の席の上級生とおぼしき人が、「僕は来週から来ないから、代わりに出席簿に僕の名前を記入しておいて」と言って、そのままその人は授業に来なくなった。当時、わしはいたいけな1年生であった。
わしも人がいいというか、その人が最初の講義の日に記入した筆跡をまねてまで、その後もずっと名前を書き続けてやった。わしが裏切ればそれまでだったのに、よくそんなことをするよなぁ。
本当にデタラメな奴が多い大学であった。
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