高名の木登り


  なぜか小学生の男の子の間には、大便用のトイレに入ってはいけないという不文律がある。今回はそれが悲劇を呼んだ話だ。

 小学校2年生の時、クソに行きたいのをずっと我慢していた時があった。が、尿意ならぬ
クソ意を催したのがその日の最後の時間だったので、家でしようと思ったのであった。

 家まで通学路にしたがって帰ると15分かかるが、裏門から通学路破りをすると5分ほどで帰れる。そんなもん、当然、通学路破りだ。

 しかし、この5分が長い道のりだった。歩いて帰るのはもどかしいし、走って帰るとその反動でもれてしまいそうだ。それで早歩きを選んだ。

 もうあかんという絶望の淵に何度も追い込まれたが、不屈の根性でそのピンチを脱し、家までたどりついた。しかし、玄関を見た瞬間、緊張の糸が切れ、ここで壮絶なKO負けを喫したのであった。

 あともう少しで判定勝ちだったところを逆転パンチを食らったボクサーってな感じであった。まさにマイク・ウィーバーとジョン・テートの世界ヘビー級タイトルマッチである。

 今回の話で想起されるのが、徒然草の「高名の木登り」である。その話はというと…。

 その昔、木登りの名人がいた。名人の弟子が高い木の上で作業しているのを名人が下で見ていた時のこと。弟子が高いところで作業している時には何も注意を与えなかった名人がもう足が届く地点に弟子が下りてきたところで、「おい、気をつけて下りてこいよ」と注意したのである。

 それを見ていたやじ馬が、「何でこんな低いところに来るまで注意しないのですか?」と聞いたところ、「高いところでは誰でも十分に注意する。こういう誰もが油断するところの方が注意が散漫になって危ないのさ」と答えたという。


 気の緩みを戒めたこの話を今後も教訓にして、クソとの新たな闘いに臨みたい。


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