トラウマ


 クソとの闘いが本格的に始まったのは中3の秋からであった。

 それは5時間目の数学の時間のことだった。前の晩の塾帰りにカレーの王様でカレーの大盛りを2杯食べた余波で、その日は朝から腹の具合が優れなかった。

 そして、5時間目の数学の時間に猛烈なクソ意を催した。もうどうにも我慢できなくなって、トイレに行かせてくれと数学の教師に頼んだところ、そのヤロー、あろうことか、「そこのバケツにしろ」とぬかしくさりやがったのだ。

 わしの日頃の授業態度の悪さがそう言わせたのだろうが、わしは完全に切れ、「ふざけるな」と激怒した。すると、数学の教師も、「『ふざけるな』とは何て言い草だ。授業中トイレに行きたいなど言う方がふざけているだろう」と逆切れしたので、さらにこっちも切れ、「トイレに行かせろよ」と勝手にトイレに行ったのだが…。

 もれる寸前だったのでトイレのドアにタックルを掛けたら大音響がし、教室から爆笑が聞こえてきた。教室に戻ったら数学の教師と一悶着あるかと思い、クソしながら、「授業中にトイレ行かせないのは教育法違反だ」という反撃の言葉を考えていたが、数学の教師はなぜか矛を収めていた。

 そして、その翌日。5時間目の国語が始める直前にまたもやクソがしたくなり、トイレに行った。すると、国語の教師が小便をしていたので、「ちょっと用をするんで、授業に遅れてもいいですか?」と聞いたところ、「あ、そう。わかった」という答えが返ってきた。

 昨日の数学の教師と何と違うことか。
しかし、本来なら10分くらいかかるところを5分で切り上げたため、授業中強烈なクソ意に襲われた。

 昨日にあんなことがあっただけに限界まで我慢したが、またしても敗れてしまい、トイレに行っていいですか?」と申し出た。

 さすがにこれにはクラス中が爆笑となった。しかし、ハガかった。クラスには心憎からず思っている子もいたのによ。

 
それ以降、「授業中にまたクソ意を催したらどうしよう」という強迫観念にかられるようになった。そのため、休み時間ごとにトイレにしゃがみ込むのが日課となってしまった。それは高校入学後もしばらく続いたのであった…。

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