酸欠との闘い


 
どんな試合でもホームとアウェイでは大違いである。特にそれはサッカーのワールドカップの予選において顕著である。日韓ワールドカップ予選においてオーストラリア代表チームがウルグアイにおいてアウェイの洗礼を受けたことを記憶している人も多いだろう。

 ホームとアウェイにおける一番大きな差は気候条件の差ではないだろうか。フランスワールドカップの予選でカナダとメキシコがホーム&アウェイで対決したが、カナダの選手はメキシコシティの2200mの競技場で酸欠状態に苦しみ、完敗してしまった。そして、メキシコの選手はエドモントンの−12℃の寒さに全く体が動かなくなり、実力では上回りながら敗北を喫した。それにしても、かたや2200mの高地、かたや−12℃、このホームとアウェイの違いは極端過ぎる。

 世界で最もホームのアドバンテージがあるのはボリビアだろう。ボリビアの首都ラパスは、ほぼ富士山頂と同じ約4000mの標高を示す世界最高所に位置する。

 ボリビアでも、他の南米諸国同様、サッカーが最も盛んなスポーツである。そして、国際試合はラパスの競技場で行われる。

 ブラジルやアルゼンチンなど平地の国の選手は、「ラパスだけでは試合をしたくない」と、ラパスでの試合を恐れている。なにせ4000mの高地で走り回らねばならないのだから。

 4000mもの高地になると、平地に比べて酸素が非常に薄くなる。酸素が薄いところでは呼吸が速くなるため、二酸化炭素がたくさん吐き出され、血液がアルカリ性になってしまう。そして、血液がアルカリ性になると、血管が収縮して脳に流れる血流が弱まる。これが高山病である。したがって、4000m近い高地で走り回わると、すぐ酸欠に陥ってしまうのだ。

 ラパスで戦うアウェイチームは、酸素ボンベを持ち込むなどの対策を練っている。そして、スローインやフリーキックでプレーが止まった際は、誰もが酸素ボンベにむさぼりつく。

 しかし、それはその場凌ぎに過ぎず、ラパスではホームのボリビアが圧倒的有利を保つ。日韓ワールドカップ予選でも、ラパスでの試合においてブラジルは1−3で苦杯を喫し、アルゼンチンもやっとのことで3−3の引き分けに持ち込んだ。

 現地のインディオが高山病にかからないのは、彼らの血液中には赤血球が多く、酸素を運ぶヘモグロビンを作るホルモンが多いかららしい。また、長い高地生活の結果、彼らは普通の人間の心臓より大きい心臓を持つようになったとも言われている。

 次回のブラジルワールドカップにおいては、日本も長く苦しい予選を勝ち抜かねばならない。そして、その予選では必ず中東勢とアウェイで戦うことになる。果たして、あの独特の雰囲気、苛酷な気候条件のもとで日本代表は勝ち点を取れるのだろうか?
 


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