体育教師との出会い
その日は生まれて初めての面接試験だった。部屋に入ったら、張本勲に少し風貌の似た若い教師がいた。その教師はいかつく、見るからに体育の教師という感じだった。
その教師はいかにも駆り出されたという感じで、あまりやる気がなかったようだと記憶している。果たして、質問もデタラメだった。
教師:得意な科目は何だ?
わし:一応、英語です。
教師:それじゃ、苦手な科目は?
わし:音楽です。
教師:音楽のどこが苦手なんだ?
わし:歌が下手なんです。
教師:じゃ、歌ってみろ。
わし:…。
教師:まあいい、今日は帰ってよろしい。
ってな感じで、3分も経たないうちに面接が終了した。「こりゃあ、やばい。落ちたな」と思った。筆記試験は前日に行われ、面接時には面接官に筆記試験の得点がわかっていると聞いていたからだ。
が、運良く合格し、その高校に行くことになった。で、初日、教室に入ったら中学校から進学してきた奴らが徒党を組んで大騒ぎしていた。
高校から入学した奴らを威嚇するために、必要以上に大騒ぎしていたらしい。それとは対照的に、高校から入学したわしらは1人1人ポツンと席に座ることもなく後ろに立っていた。
そこに担任が入ってきたが、目が点になった。あのなおざり面接の教師だったのである。その教師は予想通り体育の教師で、剣道六段とかいう猛者だった。
体育祭で優勝するために運動のできる奴ばかりクラスに集めていると後で聞いた。どうりでクラスの3分の2がスポーツ刈りだったわけだ。
面接のこともあってか、初日からわしに声をかけてくれたので、「いい先生だなぁ」と思ったが、それが大きな間違いだとは、この時は知る由もなかった。
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