未だ茫然自失

　
　その電話は、昨日の午後５時14分に掛かってきた。「不動産会社の××ですが…」と相手が名乗った瞬間、用件を察した。

　「借主様が解約するとのことです」か…。その瞬間、全身の力が抜けた。

　借主は、「長く借りたいと思っています」と言っていたのに、１年で出て行くとは、どういうわけだ？　

　だいたい２年契約だったじゃねぇか。それが１年で解約とは訳がわからん。

　電話をしてきた奴に解約の理由を聞いたら、「住み替えをするとのことです」という答えが返ってきた。ということは、借主は数か月前から引っ越すことを考えていたのだろう。

　それにしても、解約の理由がわからん。住み心地が悪かったのか？　

　確かに、日当たりは悪い。それに、横に10階建てのマンションがあって、圧迫感がある。

　それとも、他に理由があるのか？　「実家の前のアパートに黒人が住んでいる」と弟が言っていた。借主には幼い娘がいるから、その黒人を恐れたのか？　

　借主は４月いっぱいで出て行くとのことである。それでは、次に貸し出すのに時期が悪過ぎる。

　５月に家を借りようなんて奴はいまい。次の借主が見つかるまで相当の時間を要するのは確実だ。

　こうなったら、売却するのも手だな。その金で、わしが孤独死するだろうマンションを買うか。

　しかし、晴天に霹靂とはこのこと。あまりの急転直下に、昨日の晩から全く食欲がない。わしは、金のことより、逃げるように出て行かれるのがショックなのである。

　そのショックは今日も続き、今日の高校野球は茫然としたまま見ていた。桐生第一がサクッと勝ったようだが、試合内容をよく覚えとらん。

　明日の準々決勝も楽しめまい。その前に、第１試合が始まる時間に起きられるのか？　

　ちなみに、わしが予想したベスト８のうち、福知山成美、履正社、沖縄尚学、明徳義塾が当たった。まあ、そんなところだろうな。　

　あれだけ内装工事と外装工事に金を掛けたのに、その半分も回収できないまま出て行かれるたぁ、「計算外だよ、玄大佐」どころではない。

　いいことが何にもナイマンなら、まだいい。悪いことがアルトマンばかりだと、心が折れる。

　それでも、ＧＷには麻雀をやる。絶対に負けらない勝負になりそうだ…。