真の友情・大門大吾


 タイガーマスクこと伊達直人は、孤児院の施設「ちびッ子ハウス」を脱走して、 悪役プロレスラー養成所・虎の穴に入門した。そこで鍛えに鍛えられ、「タイガーマスク」という名を受けデビューしたが、そのすさまじい反則で全米中から「黄色い悪魔」として恐れられていた。

 やがてタイガーマスクは来日し、伊達直人としての素顔で、かつて自分がいた「ちびッ子ハウス」を訪れた。しかし、「ちびッ子ハウス」は借金まみれで、人手にわたろうとしていた。

 そこで直人は虎の穴に上納しなければいけない金を使い、「ちびッ子ハウス」を救う。虎の穴にはファイトマネーの5割を納めねばならないという血の掟があるのだが…。ここにタイガーマスクは「虎の穴」の裏切り者となる。

 「虎の穴」の死のマネジャー・ミスターXは、「虎の穴」出身の殺し屋レスラーをタイガー抹殺のため、次々と送り込んできた。

 タイガーは目には目の反則で彼らに対抗しようとするが、試合を見にきていた、ちびッ子ハウスの先生・若月るり子(かつての直人の同級生)に、「子供達に『反則はいけない』ということを教えてあげて」と言われ、反則をしなくなる。

 タイガーマスクはちびッ子ハウスの子供達に絶大な人気があり、以来、彼らのために反則なしで必死に戦う。


 そして、そのファイトマネーは全てちびッ子ハウスを始めとする孤児院のために使った。誰が寄付しているか、誰にも知らせないで。この無償の奉仕に感動しない者はいないだろう。


 虎の穴の殺し屋レスラー達が返り討ちに合うのに業を煮やしたミスターXは、虎の穴で直人と親友だった大門大吾に白羽の矢を立てる。虎の穴で2人だけが日本人であり、2人は篤い友情で結ばれていたのである。

 大門もすばらしく強く、2人の試合は白熱するが、ついにタイガーが勝利する。試合に負けた者には虎の穴の処刑が待っているが、大門は逃走に成功し、やがてタイガーがなぜ虎の穴を裏切ったかを知る。そして、陰からタイガーを支えるようになる。

 つまり、その試合以降、大門はタイガーの心の支えになったのだ。しかし、やがて大門も「裏切り者第2号」として、虎の穴から狙われるようになる。

 そしてついに大門もタイガーを正面から救うべく、覆面レスラー「ミスター不動」としてリングに登場する。

 タイガーにとってこれがどれほど心強かったことか。ある試合の前、控え室で伊達直人からタイガーに変わる時、タイガーは大門に背を向けながら、「今まで孤独だったこの変わり身の瞬間。今はこうしてお前が立ち会ってくれる…」と言う。その時、タイガーが涙を流していたことは大門は知らない。そして、わしも密かに涙していた。

 裏切り者第2号の出現に脅威を感じた虎の穴の大幹部3人(常にミスターXにタイガー抹殺の命を与えていた赤覆面の3人)は、ついに幻のレスラー、「ビッグタイガー、ブラックタイガー、キングタイガー」の3人をタイガーと大門に挑戦させることにした。


 この幻のレスラーの正体は、大幹部である赤覆面の3人であった。つまり、大幹部自らがレスラーとして裏切り者2人の抹殺に乗り込んで来たのだ。3人は3人とも桁外れの強さと恐怖の反則技を持っていた。

 大門は幻のレスラーとの闘いを前にタイガーに、「お前はあの子らのために生きねばならない。俺はお前のために死ねばいい」と告げる。さらに大門は、「奴らのためタイガーに一滴たりとて血を流させはさせん。俺はこの血戦でタイガーのために犠牲になるのだ」と誓う。

 ついにタイガー・大門とビッグタイガー・ブラックタイガーのタッグマッチが切って落とされた。試合は荒れに荒れ、タイガーはリングで失神する。

 そこで大門はビッグ・タイガーとブラックタイガーを場外に誘い出した。しかし、大門は場外で床に足を突っ込み、身動きできなくなってしまった。

 そこにマイナスドライバーとメリケンサックを持ったビッグとブラックが襲いかかる。挟撃された大門の死は必至かと思われたが、自ら足を折り、窮地を脱して2人を同士討ちにさせた。しかし、大門も救急車で病院に担ぎ込まれたのであった。

 そして翌日。タイガーとキングタイガーのシングルマッチの日だ。試合前、病院を訪れたタイガーは、病室のドアをそっと開け、意識不明の大門に、「大門、早く良くなって、また2人で暴れ回ろうじゃないか」と言い、試合会場に向かったのだった。

 試合はタイガーがキングタイガーの自爆により勝利するが、同時刻、大門は病院で息をひきとった。タイガーが勝利の瞬間に、「大門、見てくれ。俺は勝ったぞ。ついに虎の穴を倒したぞ」と言うが、瀕死のキングタイガーが、「これで虎の穴が滅びたと思うのはまだ早いぞ。虎の穴にはまだ我々以上のレスラーがいるんだ」と告げる。

 これを聞いたタイガーは、もうこの世にいない大門に向かって、「大門、我らの敵はまだいる。今度こそ2人力を合わせて虎の穴を叩き潰そうではないか」と言う。このシーンは今もって涙なしで見ることはできない。

 3人タイガーの死により、虎の穴にはもうタイガーマスクを倒すレスラーはいないものと思われた。しかし、キングタイガーの言葉通り、虎の穴の総帥=タイガー・ザ・グレートがいた。彼は力・技・反則のすべてが奇跡的に優れた、「ミラクル・スリー」として、タイガーの前に現れたのだった…。

 無二の親友の死。視聴者である子供達にとって、これ以上のショックはないだろう。わしも子供の時、怖くてタイガー・大門VSビッグタイガー・ブラックタイガーのタッグマッチの回は正視できなかった記憶がある。

 友情について考える時、親友のために自らの命を散らせた大門大吾のことを決して忘れてはならない。

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