神が打たせた正義の一発B

‘読売、痛恨の敗戦’


 
1986年10月7日 神宮球場 ヤクルト−読売最終戦

 
  売000002000…2
 ヤクルト01000200×…3


 

 
6回表、読売の攻撃はトップの松本匡史から。松本は高野の甘いストレートを逃さず、右中間に3塁打を放った。

 続く打者は、篠塚利夫,吉村禎明、クロマティ。本来の4番・原辰徳は、広島・津田恒美の豪速球で手首を骨折し,欠場していた。しかし、原のいない左打者が続くこの打線の方が高野には嫌であったろう。

 ノーアウト3塁で、バッターは巧打者・篠塚。「1点はしょうがない、篠塚は塁に出すな」と私は念じていた。

 篠塚は高野の速球を思い切り引張った。一塁線を襲う猛ライナー。「ああ、同点だ。さらにノーアウト2塁か」と思った、その刹那。一塁手のレオン=リーが横っ飛びでこの打球を押さえた。
レオンの超ファインプレーである。

 とはいえ、なおもワンアウト3塁とピンチは続く。打席には強打の吉村。ホームラン性の大ファールで心肝を寒からしめられたものの、高野は渾身のフォークで吉村を三振に仕留めた。

 ノーアウト3塁がツーアウト3塁。にわかに光明が差してきた。

 ここで打席に立ったのは、10月3日のヤクルト戦に満塁ホーマーを打つなど、手がつけられないくらい当たっていたクロマティだった。「ここは敬遠だ。次打者の中畑ならまず大丈夫だ」と、私は思った。

 しかし、バッテリーはクロマティに勝負を挑んだ。そして、それはもろに裏目に出た。逆転ツーランを食らったのである。先日に続くクロマティの劇的ホームラン。

 私は何が起こったのかしばらく理解できなかった。「これは完全に読売の流れだ。今日も負けたな。最終戦は大洋だし,読売は勝つだろう
いかな広島でも残り5試合を全勝するのはしんどいな」と,読売の優勝を覚悟したのだった…。


「神が打たせた正義の一発」Cへ 「神が打たせた正義の一発Aにもどる
プロ野球の話項目にもどる トップページへもどる