この人ほど、味があったアナウンサーもいないだろう。鈴木文弥アナのような名調子というわけではないし、島村アナのような美声の持ち主でもない。しかし、その当意即妙さと味わい深さは、右に出る者がいないだろう。
そして、土門アナはインタビューで、相手を泣かせる名人でもあった。1986年の夏の大会において、東海大四校が逆転サヨナラ勝ちをした時(相手ピッチャーはあの伊良部[当時2年])のインタビューで監督を泣かせていた。
甲子園での同校初勝利であり、感情が高ぶっていたところ、「今までの苦労が実りましたね。いろいろとつらかった時のことを思い出しますよね?」など、優しく優しく語りかけたので、監督もつい感情が爆発してしまった。「三好先生(東海大四の前監督)と一緒にやってきたことがようやく実り…」と言って号泣し出した。これには聞いている方もホロリときた。
そんな土門アナも、完全試合を達成した前橋高校の松本投手のインタビューには四苦八苦していた。
当時は決勝戦以外は選手はインタビューしないのだが、史上初の完全試合なので、松本投手が特別にインタビューされた。インタビュアーは土門アナだった。
そこで土門アナがいろいろと意地悪な質問をしたのだが、松本投手は相手の挑発に一切乗らず、冷静に答えていた。さしも土門アナも気圧され、マイクを放送席に返す際、「ピッチングも優等生でしたが、インタビューはもっと優等生でした」と言っていたのが印象に残っている。
また、土門アナは視聴者が見えないことをよく伝えていた。たとえば、1981年選抜決勝のPL−印旛は松永玲一氏と組んで実況をしたのであるが、試合が始まる前、「場内は緊張感に包まれてますが、隣の松永さんも緊張の面持ちです」と言ったのには思わず吹き出してしまった。
またNHKが各高校のゲストを招いていた時の話であるが、ある高校がハガい形で先制点を取られた。すると、「今、××さん(先取点を取られた方のゲスト)は、いかにも無念そうにコップの水を飲み干しました」と、細かい描写をしていたことがある。
現在、土門アナはサンテレビで阪神応援団と化してアナウンサーをしているらしい。今度スカパーで聴いてみようと思う。
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