修羅場


 その@ 授業参観日
 
 この話は、わしが中2の時のことである。授業参観日の授業中、クソがしたくなったのだ。

 まだ授業が始まったばかりであり、親はあまり来ていない感じだった。それで今がチャンスとばかり、クソに行く旨を教師に言おうと思ったその刹那、うちの親が教室に入ってきた。あかん。これじゃ、言えねぇ。

 こうなったら授業が終わるまで我慢するしかない。その時は腹をひたすらさわりまくって何とか難を逃れた。もし闘っている時、教師に指されていたら、どんなに簡単な問いにも答えられなかったことだっただろう。


 そのA 中学の卒業式
 
 中学の卒業式を前に担任が、「卒業式の最中にトイレに行きたいなんて言うなよ。以前卒業式の最中にそういう奴がいたが、いまだに語り草だからな」と、みんなに注意を促した。

 バカヤロー、余計なこと言うんじゃねぇ。もうその時はクソとの闘いの歴史が始まっていたから、この注意はわしにとって逆効果。ったく、変なことを意識させるんじゃねぇよ。

 というわけで、当日、案の定闘いが勃発した。しかし、不屈の闘志で劣勢を覆し、KOを免れたのであった。


 そのB 大学の授業中

 
 卒論の担当教授と面接をした翌日の授業中にクソが行きたくなってしまったことがある。その授業は出席を取ってないこともあって、講義には5人ほどしか出ていなかった(授業に出る学生が少なかったのは、こう言っては本当に申し訳ないのだけれど、授業があまり面白くなかったこともあったのかも。テキストがその教授が書いた「ベトナムの農民」ではさすがにつらい…)。
 
 出席を取らない授業など死んでも出ないが、早い段階でその先生に卒論をお願いしようと思っていたので、やむを得ずまじめに出席していたのだ。5人しか出席者がいないうえ、前日卒論のことで顔合わせをしたばかりだし、トイレ行かせてくれと言う勇気はなかった。つまり、闘うことを決意したわけである。

 常人ならばとても持たないところであったろうが、中学以来数々の修羅場を通っているわしには、ものの数ではなかった。その授業が終わってからトイレに行ったわけだが、クソしながら、「さすが、俺」と1人悦に入っていたのであった。

※卒論の口述試験というのがあって、何を聞かれるのだろうと構えていた。ところがその教授に、「これ、僕が書いた、『ベトナムの少数民族』という本なんだよ。今度、買ってくれないかな」と言われ、「はい、買います」と言って、口述試験が終わった。すんません、その本、まだ買ってません。でも、卒論の成績は優だったことを付記しておきたい。


 そのC 教習所にて

 わしは社会人になってから数年して自動車免許を取ったのであるが、教習所での学科の授業中に闘うことになろうとは…。授業を受けるのは数年ぶりであったが、机に座った瞬間、クソに行きたくなった。
授業中にクソと闘ってきた歴史を体が覚えていたのである。まさに「三つ子の魂百までも」だ。

 わしが免許を取りに行った時は、数か月後の道路交通法の改正で免許が取りにくくなるというので、教習所はどこも未曾有の混み方であった。そのためその教室も人であふれ返っており、とても授業中にトイレに行かせてくれというシチュエーションではなかったのである。

 そこで、「あしたのためのその1、その2、その3」よろしく、「@授業に没頭してクソ意を忘れる。Aひたすら腹をさすりまくる。Bいやらしいことを考えてクソ意をそらせる」を、数年ぶりで実行した。なんとか切り抜けたが、それ以降、学科の授業前は必ずトイレに行くことにしたのだった。


 そのD 急な下痢

 社会人になって2年目の昼休みのこと。その時、とっつぁんとサテンでしゃべっていたが、急に腹が痛くなり、クソがしたくなった。

 すぐに、「これは下痢だ。待ったなしだ」と思い、サテンのトイレにもうダッシュ。しかし、誰かが入っており、ダメ。で、サテンのすぐ隣にあるゲーセンのトイレに駆け込んで、かろうじてKOを免れた。

 しかし、そこでも誰かがしていたら…。にしても、普段からそこでゲームやっていて良かったぜ。じゃなきゃ、最短経路でそこに行けず間に合わなかっただろう。

※昔、正露丸のCMで、男の人が顔をしかめながら腹を押さえたところで、「急な下痢、腹痛には正露丸」とナレーションが入ったが、それを見て、「もう間に合わねぇよ」と思ったのはわしだけだろうか?


 そのE バッティングセンターにて
 
 1995年夏。ヤクルト−阪神戦の試合終了後、クソがしたくなった。しかし、試合が終わった直後なので、トイレはどこも超満員。

 しょうがないから、神宮球場そばにあるバッティングセンターでしようと思った。そして、そこに行ったら、店じまい寸前であった。

 だが、もうその時は漏れそうだったので、管理人とおぼしきばばぁに、「トイレ、貸して下さい」と言って、無理やりトイレを使用した。その時、そのばばぁは何かわめいていた。

 で、出てきたらそのばばぁがわしを口汚く罵り始めたのでこっちも切れ、「もれそうだったんだからしょうがねぇだろ」とばばぁを怒鳴りつけたのであった。


 そのF 高田馬場にて

 わしは通勤に西武新宿線を利用しているのであるが、ある時、下落合あたりから突き上げるようなクソ意を感じ始めた。

 高田馬場駅でしようと思ったが、朝のターミナル駅のトイレはまず空いていない。案の定、西武新宿線も山手線も、そして東西線のトイレも占有者がいた。

 朝の8時だったので、ゲーセンもパチンコ屋もやっていない。コンビニも当時は駅の周りにはなかった。

 絶望的な気分で朝の高田馬場駅近辺をさまよっていたが、ルノアールの外を掃除しているウェーターが目に入った。そこでまだ開店していないところを無理に頼んで、トイレを貸してもらった。バッティングセンターのばばぁと何と違うことよ。

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