失 言


 この話は、1994年のことだったと記憶している。ちょうどワールドカップアメリカ大会が開催されていたから、その記憶に間違いはないはずである。

 ワールドカップで頭が一杯だったうえ、相手の顔の写真がピンぼけでよくわからなかったから、あまりやる気がないまま臨んだ。
しかし、そのやる気のなさが命取りになるとは、この時は神のみぞ知るだった。

 紹介してくれた生命保険のおばさんの手前、断るわけにいかず、惰性で新横浜まで行ったのだが、ホテルのロビーで相手に会ってびっくり。NHKの歌のお姉さんのような感じの
清楚でスタイルの良い美女だったのだ。

 当然、即、やる気を出した。
しかし、おばさんとの電話において相手のデータを上の空で聞いていたため、相手に即した会話ができないで苦しんだ。

 くそ〜、こんなことなら初めからやる気を出していれば良かったわ。


 で、会話が小中学校時代の話になった時、「ホント、教師にはロクなのがいなかったですね。だから、僕の経験では、教師の子供もダメな奴が多かったです」と話した。

 あくまで自分の体験でそう思っているから、そう話したまでであるが(しかし、初対面の相手に話すことじゃねぇ)、相手は毅然と、
「あの、私の父、中学校の校長やっていたんですけど」と返してきた。

 まじで絶句。元阪神監督の安藤じゃねぇぞ。安藤は、高卒ルーキーの荒木大輔に初勝利を献上した試合後のインタビューに、「絶句」と答えたという。当然、その後の会話は押せ押せで狂いっぱなしになった。

 ん、結果? その後のワールドカップを虚ろな気分で見ていたわい。


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