アルゼンチン大会で用いられた公式ボールは、やたらと飛距離が出るものが採用された。そのため、大会は信じられないようなロングシュートが幾つも見られた。
特にオランダのロングシュートは相手を震え上がらせた。当時のオランダは、クライフが大会を辞退したことから力任せのサッカーを展開し、ロングシュートを打ちまくっていたのだ。
オランダとの決勝戦を前にしたアルゼンチンのメノッティ監督も、「オランダのアグレッシブなサッカーとロングシュートに脅威を感じている」と、ビビっていたものであった。
オランダ勢のロングシュートの中でも出色のものは以下の3つである。
@西ドイツ戦のハーンの25mシュート…それまでワールドカップの無失点を更新し続けていたマイヤーの記録をストップしたシュート。距離的にはそんなに長くないが、砲弾のようなシュートがコーナーギリギリに決まり、さしものマイヤーもまるで反応できなかった。
※これで1−1の同点に追いついたオランダであったが、後半の半ばに勝ち越し点を取られてしまった。そこからDFが全員上がるという総攻撃を展開した。そして、終了直前にルネ・ケルクホフが同点ゴールを挙げ、試合は2−2の引き分けに終わった。
Aイタリア戦のブランツの25mシュート…この試合、引き分けでも決勝進出が決まるオランダであったが、センターバックのブランツが前半にオウンゴールを献上してしまう。そこで後半に入ると、オランダはまたも総攻撃に出た。そして、後半5分、FKで上がっていたブランツがイタリアゴール前の混戦から利き足ではない右足を振り抜き、25mの弾丸シュートをイタリアゴール突き刺した。まさに、オウンゴールの責任を取った形の汚名返上のゴールであった。
※ゾフをもってしても、混戦の中から突如として放たれた猛シュートを止めることはできなかった。
Bイタリア戦のハーンの40mシュート…これは、現在でもワールドカップ史上最長のシュートとされている。1−1に追いついたオランダは、さらに攻撃に出る。そして、後半30分過ぎ、センターラインから少し入った左タッチライン際をドリブルしていたハーンが突如としてシュートを放った。40mもの距離があったが、ボールはぐんぐん伸び、左コーナーポストに当たって入ったのである。
※さしもの鉄壁のキーパー・ゾフも手のほどこしようがない物凄いシュートであった。決められたゾフはしばらく座り込んでほど、ショックを受けていた。
このほかに、信じられないような軌道を描いて決まったブラジルの2本のシュートにも触れておきたい。
まず1本目は、二次リーグのペルー戦で決めたディルセウのフリーキック。
距離は30mほどであったが、その曲がり方が凄かった。大袈裟ではなく、直角に曲がっているよう見えた。未だにあんな凄いフリーキックは見たことがない。
そして2本目は、3位決定戦のイタリア戦で見せたネリーニョのシュート。
右サイドにオーバーラップを仕掛けたネリーニョにパスが出たが、ゴールライン手前まで来てきたのでシュートを打つ角度がない。しかし、ここでネリーニョは強引にシュートを放つ。シュートはギュ−ンと曲がり、ゾフの手をかすめて、左コーナー一杯に決まった。これぞ正真正銘のバナナシュート。初めてこのゴールを見た時、「ホントかよ」と思ったものである。
こうしてみると、ゾフがやたらとロングシュートの犠牲となっていることがわかる。しかし、逆に考えると、誰もが取れないようなシュートでなければゾフの堅塁を突破できなかったということになろう。
※ところで、ロングシュートといえば、かつてはソ連のお家芸であった。その伝統は今のロシアにも受け継がれているので、ワールドカップのロシア戦前は、オランダ戦前のメノッティのように、自分も彼らのロングシュートにビビっていた。これはソ連の脅威をまざまざと体験してきた都並も同様であったようで、「今の若い人はソ連の凄さを知らないからロシア戦を楽観している人が多いようだったけど、僕はビビりまくってましたよ」と言っていた。本当によくロシアに勝てたものである。
ただ、最近のワールドカップで上記のような驚異的なシュートが見られないのは残念である。
次のページへ進む | 前のページへもどる |
サッカーの項目へもどる | トップページへもどる |