実は、早実には張本以上の暴力教師がいたのである。その教師は蛇のような顔をしており、破壊力では張本に劣るものの、そのキレ方は張本以上であった。
中学部から上がってきた連中の話では、中学部時代のその教師の怖さはハンパじゃなかったらしい。
ある生徒を左ストレートで殴った際、蛇教師は時計を壊してしまった。それで殴った生徒に壊した時計の弁償させたという。もし弁償するのをその生徒が拒んだら無事では済まなかったであろう。
わしが蛇教師の存在を初めて知ったのは、4月上旬の合宿においてであった。その合宿の目的は、中学部から上がった連中と高校から入学した者の融合を図ることだったらしい。
そして、合宿初日の夜。体育館でミーティングが行われた際、後ろの方でしゃべっていた奴に蛇教師がキレた。「早実を、教えてやるぅぅ」というあまりの大きな声と生徒を殴りまくる音で、高校から入学した連中は、全員、震え上がっていた。
わしも、「とんでもない高校に来たなぁ」と、心底ビビった。中学部から上がってきた連中は、その蛇教師の恐ろしさを知っていたので、「バカな奴だ」と、内心笑っていたらしい。
殴られた奴ではなく、その様子を目の当たりにした奴が恐れをなして退学したというウワサが立ったが、真偽のほどは定かではない。
それから数日後、蛇教師の最初の授業があった。蛇教師は英作文の担当であった。しかし、折悪くわしは英作文の教科書を忘れてしまった。
本来なら隣のクラスの奴にでも借りにいくところだが、入学したばかりで他のクラスに誰も知り合いがいない。しょうがないから蛇教師のもとへ教科書を忘れた旨を言いに行った。
誰もがわしがぶん殴られると固唾を飲んでいたが、なぜかその日は蛇教師の機嫌が良く、無罪放免となった。それにしても、危ない橋を渡ったもんだ。
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