高校に入学してからすぐに茨城県の高萩で合宿があった。合宿数日前、中学部から上がってきた奴らに、「君、何か好き嫌いとかある?」と聞かれた。「うん、食べられない物、結構あるよ」と答えたら、「そりゃあ、やばいよ。出た物は全部食べさせられるから」という答えが返ってきた。
まじでまっつぁお。「魚のしっぽも食べろ」という命令が出たり、虫の浮いた味噌汁を飲まされた奴もいたというのだから。
また、夕飯の後片付けの際、肉の脂身が残っていたら、張本や蛇教師の「誰だ? これを残したのは?」と怒声が響いたという。それで、「あいつです」とみんなに指を指された奴が無理やり食わされた話も聞いた。で、そいつは残した肉の脂身のみを食べさせられ、それでそれからずっと「ハイエナ」と呼ばれていた。
ある奴は朝食を全部食べ終わるまで午前11時過ぎても食堂に残された。さらに、そいつは昼飯を食べ終わるまで4時頃まで食堂に居させられ、夕食を全部片付けるまで夜10時まで食堂に残され続けたらしい。
ところが、ある時、あと片付けたをしてたら、トマトが思いっ切り残されていたのが発覚した。当然、「誰が残した?」という怒声が飛んだが、残したのは陰険なことで有名な数学の教師だったという。
以上のような話を聞いても、いきなりその合宿を休むわけにもいかない。だいいち張本がそんなことを許してくれるはずがない。
合宿に行く電車の中でずっと方策を考えていたが、妙案が思いつかない。これこそクソとの闘いどころではない、まさに生涯最大のピンチ。
それで塾で一緒だったクラスメートに事情を話したら、「じゃ、俺が食ってやるよ」と言ってくれた。これぞ大門大吾や伴宙太に勝るとも劣らない友情だ。
それで何とかピンチを切り抜けたが、もし中学校から入学していたらそいつはいなかっただけに、間違いなく退学に追い込まれていたことだろう。