失  望


 わしらが子供の頃は、男の子なら誰もがウルトラマンやウルトラセブンに強く憧れたものである。そして、たとえ苦戦はしても、最後に彼らが怪獣や星人に勝つということを信じて疑わなかった。

 だから、たまにウルトラマンやセブンが負けると、ひどいショックを受けたもんだった。幸いにも、ウルトラマンがゼットンに殺される回も、セブンがガッツ星人の手に落ちる回もリアルタイムで見なかったので、そのショックを実体験することはなかったが。

 ウルトラマンやセブンが敗れても、それはシリーズ中で1回か2回であり、それでさほど失望はしなかった。また、帰ってきたウルトラマンも、ベムスターおよびブラックキング・ナックル星人コンビに一敗地にまみれたが、ベムスター戦はセブンが、ブラックキング・ナックル星人戦は初代ウルトラマンとセブンがそれぞれ助っ人に来てリベンジを遂げたことから、その権威が失墜するということはなかった。そして、助っ人にきた初代ウルトラマンやセブンは、評価をさらに上げることになった。

 しかし、そのウルトラ兄弟の権威が失墜したのは、ウルトラマンエースのエースキラー登場編とヒッポリト星人登場編であった。

 帰ってきたウルトラマンで兄弟が助っ人に来た回は視聴率が高かったのだろう、それに味をしめたスタッフがエースの回において兄弟を登場させることによって視聴率を稼ごうと考えたことが想像される。

 番組の最初に流れる主題歌が終わると、「宇宙怪獣・ベムスター登場」のように、その回に出てくる怪獣の名前が字幕で紹介されるが、そこに、「宇宙怪獣・ベムスター、ウルトラセブン登場」とあったら胸を躍らせたものである。

 だからといって、そう頻繁にウルトラ兄弟を登場させてインフレ状態にしたら、彼らの価値が下落するというもんだ。それも助っ人として登場させるならともかく、ウルトラマンエースのエースキラー登場編とヒッポリト星人登場編では兄弟全員がやられてしまうのだから、何をかいわんやである。

 エースキラー登場編でエースを除く4兄弟が十字架にされるシーンや、ヒッポリト星人登場編でウルトラ5兄弟全員がブロンズ像にされるシーンなど、見るに耐えないものがあった。ていうか、子供心に何かこう納得できないものがあり、わしはヒッポリト星人登場編で完全に失望し、以降は惰性で見ていたと記憶している。

 しかし、エースのシリーズでは失望に過ぎなかったのがタロウのシリーズでは怒りに変わったのであった。

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